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陳政権の進める「正名」について

以下は、少々、古い記事ですが、今回はこの件について私見を述べたいと思います。
公営企業名から「中国」外し台湾“蒋介石色”一掃も

2月24日8時0分配信 産経新聞

【台北=長谷川周人】台湾の陳水扁政権は、公営企業名から「中国」や「中華」の文字を外し、「台湾」に置き換える「正名(名前を正す)政策」を加速している。対中融和に動く最大野党・中国国民党を牽制し、次期総統戦に向け、台湾化路線を推し進めることで、求心力の回復を狙っている。1947年に国民党軍が台湾住民を弾圧した「二・二八事件」が今月末に60周年を迎えることから、「正名」の意義を強調することで「台湾人意識」に訴える考えのようだ。

 陳政権は昨年、首都空港として機能する台北県の「中正国際空港」を「台湾桃園国際空港」と改名したが、これに続き今月上旬、造船大手「中国造船」と石油大手「中国石油」をそれぞれ「台湾国際造船」「台湾中油」と変更。中旬に入ると郵政事業を独占する「中華郵政」を「台湾郵政」と改めさせた。

 提案からわずか1カ月足らずで「脱中国化」を一気に進めた陳政権に対し、米国務省のマコーマック報道官は「名称変更を支持しない」とくぎを刺し、「現状の一方的変更」が両岸関係に与える影響を懸念する米国の立場を表明した。

 だが、内政の立て直しが急務の陳総統は「(正名は)主体性の堅持を支持する民意の主流と合致する」と主張する。

 これと連動する形で与党・民主進歩党は、国民党による独裁政権を率いた故蒋介石総統の色彩を排除するキャンペーンを始めた。(1)「中正紀念堂」など蒋氏の名に絡む道路・施設の改名(2)通貨の肖像変更(3)蒋氏の遺体が仮安置される「蒋介石御陵」からの衛兵撤退(4)軍施設からの銅像撤去-を関係当局に求めている。

 蒋氏の遺族や国民党は猛反発しているが、独立派の間にも「なぜ今まで放置したのか。あまりに遅すぎた正義だ」と不満がくすぶる。

 ただ、「中華航空」や「中華電信」など、国際問題が絡んで、域内処理が難しい企業の「正名」は先送りされたままで、政権内からは「目指すべき国号変更に踏み込めない現状では、近視眼的な選挙活動と見なされても仕方がない」とのいらだちも聞こえてくる。

台湾が外来政権である国民党進駐以来の「中華民国」から、主体性を保つ「台湾」として歩んでいこうとするのであれば、国号問題は決して避けて通る事が出来ない重要な問題です。国号に「中華」を冠している限り、大陸の「中華人民共和国」=支那との間に、本枝(どちらが「本家」=正当な中華であるか)、「一つの中国」と言った真に以て厄介な問題が何時までも続く事になります。又、たとえ、台湾が大陸支那に「中華の本家」の座を譲ったとしても、「同じ中華ならば、両岸が統一されるのが筋である」として、支那に台湾統合(併合)の口実を与え続ける事にもなります。詰まり、台湾が「中華」を名乗り続ける事は、正直言って「百害あって一利無い」訳です。

第三者的に見ても、台湾が「中華」(中華を支那大陸と同一視した場合)を代表しているとは到底言えませんし、逆に不自然にさえ映ります。寧ろ、台湾が実体として「台湾島及び其の附属島嶼」に存在している現実を反映して、「台湾は台湾である」と正名する事の方が自然であり、現実に即していると言えます。ですから、台湾が公営企業名に冠している「中華」を「台湾」に改める事は非常に理に適っているものと言えます。

正名に関連して、故・蒋介石総統に因んだ道路・施設の名称の改称 ── これ等は、ソ連時代の「レニングラード」が、連邦崩壊後、「サンクト-ペテルブルク」に改称された例にも通じるものであり、国民党時代=「中華」との決別と言う意味からも妥当なものです。又、蒋介石が眠る「蒋介石御陵」(国民党政権が大陸に帰還した暁に正式に埋葬する事を前提に、あくまでも「仮の陵墓」とされている)を警備する衛兵の撤兵についても、彼が王でも皇帝でも無かった以上、衛兵の配置はやり過ぎであり、撤兵は当然の事です。寧ろ、彼自身が西太后の陵墓を暴き、副葬品である財宝を盗取した事を考えれば、衛兵撤兵程度で済む事をあの世から「有り難く」思う可(べ)きと言えるでしょう。

扨(さて)、今回、陳政権が進めている「正名」について、マコーマック・米国国務省報道官が「名称変更を支持しない」と釘を刺したそうですが、米国に一体何の権限があると言うのか? まあ、米国が「巨大な中国市場」に目が眩(くら)んで、体制の違い(民主主義と共産党一党独裁)や、人権抑圧問題、更には大軍拡・対外膨張政策と言った看過すべからざる問題に目を瞑(つむ)り、支那に迎合している事は分かりますが、他国の事に余りにも首を突っ込み過ぎ。アフガンにしろ、イラクにしろ、自分で撒いた(戦争の)種の管理もきちんと出来ていない以上、米国は台湾の「正名」に口を挟む可きではありません。「現状の一方的変更」による両岸の緊張を危惧しているから、と言うのが表向きの口実の様ですが、自ら「民主主義諸国の盟主」を自認している以上、経済問題(如何にして、支那市場を制するかと言う問題)は横に置いても、先(ま)ず、民主主義国家・台湾の肩を持つ可きです。それが出来ないのであれば、米国はとっとと「民主主義諸国の盟主」の看板を下ろす可きと言えるでしょう。
竹下義朗 TAKESHITA Yoshiro

by ayanokouji3 | 2007-03-03 19:37 | Comments(0)  

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