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台湾の『国家統一綱領』廃止と国連再加盟について

 陳水扁・台湾総統が春節の1月29日(台湾に於ける旧正月の元日)、故郷での新年会の席上、今年の目標として、『国家統一綱領』の廃止と、「台湾」名義での国連(連合国)再加盟を検討する旨、発言したそうです。

 『国家統一綱領』が何なのか? 我々日本人は知らない人の方が多いと思いますが、掻い摘んで説明すると・・・我々が常日頃から「台湾」と呼んでいる国の正式国名は「中華民国」であり、「台湾」とは通称である訳です。そして、「中華民国」と言う国名からも分かる様に、台湾は建前として「本来、中国(支那)全土を領有する正統且つ合法な唯一の政権であり国家」を旗印としています。そして、現状は、大陸を共産党が不法占拠しており、「中華民国」は台湾に「一時的に避難」しており、大陸と台湾との国家統一を経て、再び、大陸を統治する・・・とまあ、一種非現実的且つ有名無実化した綱領である訳です。因みに、台湾の首都は台北ですが、これはあくまでも「臨時首都」であり、建前としては南京を首都と位置付けています。

 扨(さて)、この『国家統一綱領』の廃止を陳総統が打ち出したと言う事が一体何を意味するのか? 共産党が実効支配している大陸(支那=中華人民共和国)の存在を現実的に認め、幻想でしかない大陸奪還・復帰を放棄し、「台湾」(中華民国)が台湾を統治している現実を受け入れる、詰まり、脱中華民国=台湾化を明確に打ち出したと言う事になる訳です。これは、李登輝路線を今後も進む、もう後戻りする事は出来ない、と言ったのに等しく、政権基盤の弱い陳総統が、国策の舵を「台湾化」に切ったと見る事も出来ます。

 この流れの中で、陳総統が目指すのが、先に挙げた「台湾」名義での国連再加盟です。台湾は「中華人民共和国」の国連加盟を機に、安保理常任理事国の議席を失うどころか、国連そのものからも脱退し、今日に至っています。然し、台湾は人口2300万人を抱えるれっきとした「独立主権国家」です。これは、支那の「一つの中国」理論を支持する者ですら、決して無視する事の出来ない存在です。日本やインドと同様、アジアに於ける代表的な民主主義国家であり、経済的にも上位にある事は事実です。そんな国が国際社会から「鬼っ子」の如く扱われている事自体、抑も不自然であり、台湾が国際的地位をより向上させるには、国連への再加盟は最も現実的な選択と言えるでしょう。勿論、台湾の加盟に対しては、WHO(世界保健機関)への加盟妨害同様、支那があらゆる手段を以て妨害するであろう事は火を見るよりも明らかです。何故ならば、「一つの中国」の原則からすれば、国連に「中華民国」が議席を有する事は決して認められないからです。とは言え、朝鮮半島から、韓国と北朝鮮と言う、互いに自国を「半島に於ける正統な政権」と主張する国家が、国連に議席を有している以上、その前例がある以上、台湾の加盟を拒否すべき正当な理由はありません。まして、台湾が「中華民国」の看板を下ろし、「台湾」として加盟するのであれば、尚更の事です。

 国交が無いとは言え、台湾の隣国であり友邦である日本が、「仮想敵国」どころか「現実の敵国」である支那を牽制する意味でも、又、価値観を共有し、地政学的にも同盟するのが必然である台湾を支持する事は、決してマイナスにはなりません。支那・韓国・北朝鮮、そして、ロシアとの関係が上手くいっていない以上、台湾・東南アジア・インドとの関係を強化する事は日本の国策にも適うものです。「サバイバル・ゲーム」の渦中にある東アジアに於いて、日本が生き残る道は台湾との同盟であり、台湾にとっても日本との関係強化無くして国家の存立無し、と言う認識を相互に持つべき、そう言う時機に来ているとは言えないでしょうか?

竹下義朗 TAKESHITA Yoshiro

by ayanokouji3 | 2006-02-08 20:49 | Comments(0)  

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