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『満州国演義』について-2

 7月に読後感を記した船戸与一著『満州国演義』、9冊目の「残夢の骸」を読了した。参考文献が450冊近くにも及ぶ、盛り沢山の小説で確かに読み応えがあった。

 会話の表現形式がワンパターンな割りには、飲食の内容は詳細で余計と感じた。それを除けば、実にスケールが大きく、テンポの早いスリリングな展開は米国テレビドラマ「24」を想起させた。

 小説の「通奏低音」たる、奉天特務機関の間垣徳三と敷島四兄弟の歪んだ血縁関係は、人間の異常な側面を示唆し、強烈な印象を与えるテーマの一つでもあった。

 欲を言えば、四兄弟の中で生き残った四郎が戦後所帯を持ち、その子孫が新たな人間ドラマをつむいでいるという構成とすれば一層良かったと思う。50代以上の男性に薦める好著である。

古川 宏 FURUKAWA Hiroshi

by ayanokouji3 | 2015-11-13 19:35 | Comments(0)  

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