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『蛍の航跡-軍医たちの黙示録』について

 某新聞の読者投稿欄で帚木蓬生(ははきぎ-ほうせい)著『蛍の航跡-軍医たちの黙示録』(新潮社)が推薦書とされていたので、早速読んでみるに、戦記物としては久し振りに感動を覚え、戦争・戦場の実態につき考えさせられた。

 一つには、実戦部隊ではなく、軍医という戦争を客観的に捉え得る立場にあった人々の記録をまとめたものであり、科学的、また時には文化的な観点から、当時、将兵が置かれた環境や現地人との交流について憶測することが出来るのである。

 北方および南方での劣悪な気候条件、衛生状態での行軍を続け、更に、虜囚(りょしゅう)の辱(はずかし)めを受けつつ、幸運にも帰国することが出来た人々は恐らく殆(ほとん)どが鬼籍に入っていることだろうが、高砂(たかさご)族の奮闘を含め、戦争に何らかの形で関与した日本人および諸民族の人々には、頭が下がるほかはない。

 戦争とは軽々しく論評するべきものではなく、また、論評することが出来ないのをあらためて思い知った次第である。

古川 宏 FURUKAWA Hiroshi


(付記) 戦記物を読むには、陸軍であれば、『陸海軍将官人事総覧(陸軍篇)』(芙蓉書房)および『帝国陸軍編制総覧』(芙蓉書房)の2冊は必須の参考図書である。将官の経歴と陸軍組織の人事とを解読することが、理解につながる。他方、元将官と面談することは不可能となった。昭和50年代には存命であった元陸軍少将・中将の人々から種々聞き出すことも可能だったのだが、小生も当時は若く、知識が不足しており、表面上の話しか出来なかったことが今となっては悔やまれる。 〆

by ayanokouji3 | 2014-10-31 19:50 | Comments(0)  

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