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日本は「中国」の顔色等窺わず、今こそ台湾と国交を樹立せよ!

 平成23(2011)年3月11日。未だ記憶にも新しい東日本大震災が東北から関東に掛けての広い地域を襲った日です。死者1万5,782人(9月11日現在 以下同)、重軽傷者5,932人、行方不明者4,086人、全壊家屋11万5,163戸、半壊家屋16万2,015戸、全半焼家屋284戸、そして、被害総額は阪神・淡路大震災の10兆円を大きく上回る16兆から25兆円と言う未曾有の大災害となったのです。この国難に際し日本赤十字社に寄せられた義捐(ぎえん)金は、10月13日現在で約257万6千件、総額約2,938億2千万円。一方、世界各国からも米国(派遣人員約8千名・救助犬12頭・義捐金49億円以上・物資150t)を筆頭に、韓国(派遣人員107名・救助犬2頭・義捐金約7億円・硼酸52t・その他援助物資)・「中国」(支那;救助隊15名・義捐金7,200万円・ガソリン等燃料2万t・援助物資3億6千万円相当)、更にはモンゴル(援助隊12名・義捐金約1億2,500万円)、若き国王の御成婚に沸くブータン王国(義捐金約8,200万円)、太平洋のサモア(義捐金約800万円)やトンガ王国(義捐金約900万円)と言った小国からも数多くの支援が寄せられました。(10月現在概算集計) そして、その中でも一際(ひときわ)注目された国がありました。何を隠そう日本の隣国である台湾(中華民国)です。

 今回、台湾から寄せられた支援は、救助隊63名・義捐金200億円超・支援物資500t以上と言うものでした。義捐金に限って見ても、台湾からの支援額は世界一だったのですが、更に各国からの支援額を国民一人当たりの金額で見た場合、米国が約16円、韓国が約14円、「中国」が僅か5銭(0.05円)であったのに対し、台湾は864円と突出しており、支援物資をも含めて換算すれば、上はお年寄りから下は生まれたばかりの赤ん坊に至る迄、国民一人々々が千円札1枚を義捐金箱に入れた計算になるのです。これだけでも驚嘆に値(あたい)する事なのですが、更に驚く可(べ)き事は、此程(これほど)の手を差し伸べて呉(く)れた台湾と日本との間に正式な国交(外交関係)が無い事です。

 日本の未曾有の国難に対し、世界一の支援をして呉れた国、台湾。本来ならば、此程の支援に対し、日本は総理が直々(じきじき)に台湾を訪問し、総統(大統領)に直接謝意を伝えても良い位です。然し、国交が無い事、更には「ある制約」から今以て実現していません。いや、日本政府が4月11日、菅直人総理(当時)の名に於いて、米(『ウォールストリート-ジャーナル』・『インターナショナル-ヘラルド-トリビューン』)・英(『フィナンシャル-タイムズ』)・韓(『朝鮮日報』)・中(『人民日報』)・露(『コマーサント』)・仏(『ル-フィガロ』)6ヶ国の7紙の新聞に、「Thank you for the Kizuna(絆をありがとう)」と題した大々的な感謝広告を掲載したにも関わらず、最大の支援国・台湾の新聞に、それを掲載しなかった事一つ見ても、「親中左派」の民主党政権下で、これからもこの「不誠実」・「不義理」が改善される事は望む可くもありません。だからこそ、日本人在野有志により5月3日、『聯合報』(朝刊9面)・『自由時報』(朝刊5面)の2紙に、「謝謝台灣(ありがとう、台湾)」なる感謝広告が掲載されたのですから。(詰まり、現在の日本政府・与党は「民主」と言い乍(なが)ら、日本国民の意を汲む事をせず、「当てにならない存在」であると言う事でもある)

 ところで今回、台湾は何故、世界一と言われる支援を日本にして呉れたのでしょうか? 東日本大震災は日本史上稀に見る程甚大な被害をもたらした大規模災害であり、正に「国難」の一語に値する事は確かです。ですから、如何(いか)に「付き合い」(国交)が無いとは言え、「お隣さん」(隣国)の誼(よしみ) ── 義理 ── で「お悔やみ」を包むのは分かる事です。然し、其の金額が他の追随を許さぬ程の大金となると、其処に何かしらの理由が必ずある筈です。その理由の一つは、平成11(1999)年9月21日に台湾を襲ったマグニチュード7.6の台湾中部大地震(921大地震)の際、国交が無い日本が各国に先駆け、即日、国際消防救助隊145名を派遣。いち早く支援の手を差し伸べた事を台湾公民(国民)が忘れず、今回は其の際の「お礼」・「お返し」の意味も兼ねて、官民挙げて日本に対し巨額の支援をした事です。然し、それだけが理由ではありません。日本と台湾が66年前迄「一つの国」(台湾は明治28(1895)年から昭和20(1945)年迄の半世紀、大日本帝国を構成する一地域だった)事、そして、その治世を経験した老世代が比較的肯定的に受け入れ、概して「親日」である事。更には、日本による統治時代を知らない(知識として知ってはいるものの、実体験として知らない)若い世代に於いても、日本のサブカルチャーから「入門」し、更には日本文化そのものに通暁しようとする「哈日族(ハーリーズ)」(日本大好き族)と総称される新「親日」派が多くいる事。そして、日台両国共に、「中国」からの政治・経済・軍事的影響や圧力を受けていると言う共通性。これら幾つもの要素から、「正式な国交」が無いにも関わらず、盛んな「民間交流」に支えられる形で、両国の互いの国に対する国民感情は良好である訳です。

 扨(さて)、その様な日台両国が何故、際だった対立軸が無いにも関わらず、正式な国交を樹立しないのか? 其の要因の一つは台湾の国号(国名)にあります。実際、台湾が台湾国内で自己完結する政治実態を擁する主権独立国家である事は誰の目からも明らかである訳ですが、それとは裏腹に台湾を「主権独立国家」として承認、国交を持っている国は、全世界190数ヶ国中、ヴァチカン市国(ローマ教皇庁)・パラグアイ・パラオ等僅か23ヶ国(2011年現在)しかありません。然も、それらの国が国交を結んでいる相手国の名は「台湾」ではありません。台湾の正式国号である「中華民国」です。然し、その正式国号「中華民国」が妨げとなり、台湾と国交に準じた関係を持っているにも関わらず、正式な国交を結べずにいる国が多々ある事も確かです。その最大の理由は「中華」の看板を名乗っている事にあります。

 ご存じの通り、現在、支那大陸を統治している「中国」なる国の正式国号は「中華人民共和国」です。その「中国」にして見れば、昭和24(1949)年10月1日、毛沢東率いる紅軍(中国共産党軍)が、蒋介石率いる中国国民党軍を攻撃、首都南京を攻略して中華民国政府(南京国民政府)を崩壊させた事を以て、「中華民国」は滅亡。新たに中国共産党率いる「中華人民共和国」が全支那の正統国家として樹立されたと言う「歴史認識」があります。詰まり、この時点で「中華」を称するのは自分達の「中華人民共和国」のみであり、他に「中華」を名乗る勢力は存在しないと言う立場である訳です。然し、国共内戦に敗れた蒋介石の中国国民党は、嘗(かつ)て満洲から勃興した清朝により明朝が滅ぼされた際、明の遺臣であった鄭成功が大陸の拠点を放棄、海峡を渡って台湾に反攻拠点を遷したのと同様、自らも鄭成功に倣(なら)って「中華民国」を台湾に移転しました。詰まり、大陸の「中国」にして見れば「中華」=「中国」は自分達のみの筈が、台湾に自分達とは異なるもう一つの「中華」=「中国」が存在する訳で、断固として認められない訳です。これが所謂(いわゆる)「一つの中国」、「二つの中国」と呼ばれる問題である訳です。然も、ややこしいのは国連(聯合国)に於いて、終戦直後、常任理事国であった蒋介石の「中華民国」がその座を奪われ、新たに毛沢東の「中華人民共和国」が「中華」=「中国」の唯一合法な正統国家として、其の座に就いた事で、国際社会も建前上、「中華人民共和国」の掲げる「一つの中国」を受け入れ、「中華人民共和国」以外に「中華」を名乗る国家はこの世に存在しない ── 詰まり、「中華民国」を名乗り続ける台湾を正式な国家としては認めないと言うレールが敷かれてしまった事です。若(も)しも、蒋介石が台湾に遷った際、「中華民国」の看板を下ろして、新たに「台湾民国」或(ある)いはと「台湾共和国」とでも改称していたなら、ひょっとしたら台湾を正式な国家として承認、国交を樹立する国も今以上に、ずっと多かったかも知れません。と言っても後の祭りではあるのですが・・・。

 話は戻って日台関係についてですが、前述の通り、現在、日台両国の間に正式な国交はありません。日本としては、昭和47(1972)年9月29日の日中国交正常化による「中華人民共和国」との国交樹立と、それに伴う「中華民国」(台湾)との国交断絶により、「中華人民共和国」の掲げる「一つの中国」を受け入れた形になっており、その観点からすれば、原則論として台湾が「中華」の看板を下ろさない限り、国交樹立は不可能であると言えます。然し断交後も両国は、日本が台北に「財団法人交流協会台北事務所」、台湾も東京都港区に「台北駐日経済文化代表処」と言う事実上の大使館を設置、「民間外交」の名の下に経済・文化分野で関係を維持してきました。詰まり、欠けているのは現実には政治・儀礼分野であり、其処をクリア出来れば、極東に於いて比較的良好な両国が「真のパートナーシップ」に基づく強固な同盟関係を構築する事が可能である訳です。然し、そうなると当然、「中国」が看過する訳がありません。自分達「中国」の領土であると考えて居る台湾は元より、日本に対しても「一つの中国」の論理を盾に台湾との関係強化を阻止しようと攻勢に出てくる事は必定(ひつじょう)です。然し、その「中国」の攻勢を受け流し、台湾と国交樹立する方法 ── 詰まり、「中国」にぐうの音も出さない反論のカードが実はあるのです。

 話が横道に逸れますが現在、朝鮮半島には韓国(大韓民国)と北鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と言う「二つの国」が存在しています。日本はその内、韓国のみを国家として承認、国交を持っており、もう一方の北鮮に付いては国家として承認せず、当然乍ら国交も持っては居ません。(詰まり、日本としては建前上、朝鮮半島には「韓国」と言う国家しか存在しないと言う立場) では、「中国」はどうかと言うと、「米帝(米国)とその傀儡(かいらい)である南朝鮮(韓国)」の勢力を打倒、祖国(朝鮮半島)統一を目論んで北鮮が韓国に南侵した事で勃発した朝鮮戦争(実際には現在、休戦状態で終結した訳では無いのだが)を共に戦い、「血の友誼」・「血の同盟」と称される強固な同盟関係にある北鮮を一貫して「朝鮮半島に於ける唯一合法な正統国家」として承認支持し、韓国を国家として長らく認めてきませんでした。詰まり、「中国」は北鮮の建国以来、一貫して「一つの朝鮮」を支持してきた事になります。然し、それが覆される事件が平成4(1992)年8月24日に起きました。「中国」が盧泰愚(ノ=テウ)政権の韓国と国交を樹立したのです。詰まり、この瞬間、「中国」は北鮮を「朝鮮半島に於ける唯一合法な正統国家」とする「一つの朝鮮」と言う論理をあっさりと捨て去り、同盟国である北鮮の敵国である韓国も国家として承認・国交を持つと言う「二つの朝鮮」政策に転換した訳です。(この過程で、韓国は建国以来一貫して国交を持ってきた台湾と断交した) 何故、この様な話を此処で持ち出したのかと言うと、もう皆さんならお分かりの事と思いますが、一貫して同盟国北鮮 ── 「一つの朝鮮」とのみ国交を持ってきた「中国」が、「もう一つの朝鮮」である韓国とも国交を持った事で、「中国」は朝鮮半島には北鮮と韓国と言う「二つの朝鮮」が存在する事を国際社会に対し認めたと言う事実です。これは当然乍ら、北鮮から見れば「中国」の裏切りに値する行為であるのですが、当の「中国」は何の弁明も、ましてや「一つの朝鮮」から「二つの朝鮮」に方針転換するに際しての説明も行っては居ません。あるのは結果として「一つの朝鮮」政策を排し、「二つの朝鮮」政策に転換、北鮮・韓国どちら共付き合う事にしたと言う事実のみです。その「中国」の前例が日本にとって実は好都合であるのです。

 繰り返しますが、日本が日中国交正常化により「中華民国」(台湾)と断交し「中国」と国交を樹立、今日に至る迄「一つの中国」と言う論理を支持してきた現実があります。然し、当の「中国」が「一つの朝鮮」を排して「二つの朝鮮」に奔(はし)った以上、日本も最早(もはや)「中国」が掲げ、国際社会に押し付けている「一つの中国」と言う論理に縛られ続ける必要はありません。「民間交流」と称して、影でこそこそ関係を維持する様な事は已(や)め、台湾との間に正式な国交を樹立する可きです。その際、「中国」が日本に「一つの中国」と言う論理を盾に日台国交樹立を阻止しようとしてきたら、日本はこの様に言えば良いのです。

「中国」だって「二つの朝鮮」を認めたではないか?
自らの変節を棚に上げて日本を糾弾する気か?

と。当然、「中国」の事です。昨年(平成22=2010年)9月の尖閣諸島沖漁船衝突事件、いやその前、平成20(2008)年の「毒入り餃子(ギョーザ)事件」の際の対応を見れば、自らの変節等棚に上げて日本を糾弾する事は目に見えています。然し、彼等が傲慢になればなる程、「中国」に対する反発や警戒心が増長、回り回って自らの首を絞める形になるだけですし、折角、経済面で台湾公民を懐柔、台湾を自国に平和的に併合しようと言う「祖国統一事業」に冷や水を浴びせる事にもなります。このジレンマの中で、「中国」が増強の一途を辿る軍事力に訴えて迄して日台国交樹立阻止に動くのか? 若し「中国」が、その様な方向に奔ったりすれば、日台両国の対中感情は更に悪化すると同時に、「中国」を「共通の敵」とする日台両国の関係は益々強化される事でしょう。詰まり、例えれば二人の仲を裂こうとしたのが、逆に二人のお互いを想う気持ちを強めてしまう結果になってしまった・・・等と言う事になりかねず、「中国」にしても安易に軍事力をちらつかせる事は出来ないでしょう。

 孰(いず)れにせよ、現在の日台関係は正常ではありません。本来、国交を持っていて然る可き日台両国が断交した儘(まま)である事の方が異常とさえ言えます。今年11月中旬、インドネシアで開催される日本・ASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議に於いて、東支那・南支那海の航行の自由や安全、国際法規順守を骨子とする海の安全保障分野での関係強化を盛り込んだ『日本・ASEAN海洋安保共同宣言』が採択される予定で、急速な海軍力増強と領有権問題で幾つもの国と摩擦を起こしている「中国」を掣肘(せいちゅう)する観点から、日本とASEAN諸国が共同歩調を取る事で「中国」を牽制しようと言う方針が色濃く打ち出されます。其処に更に日台関係の強化を加える事で、以前から私が提唱している日台比(フィリピン)枢軸 ── 「海のマジノ線」構築による「中国」の外洋進出の阻止 ── それこそが日台両国をはじめとする海洋国家の安全保障に寄与すると私は今現在も考えて居ます。益々手が付けられなくなっている横暴且つ周回遅れで出現した帝国主義国家「中国」に対処するのに一国々々が、てんでばらばらに行動していては絶対にいけません。此処は日台両国とASEAN諸国が連携し、合従連衡(がっしょうれんこう)を以て対処する。その為の一方策としても、日台両国の関係正常化 ── 国交樹立が不可欠であり急務であると言えるのです。

竹下義朗 TAKESHITA Yoshiro
(2011-10-15 『帝國電網省』に発表)

by ayanokouji3 | 2011-10-17 22:23 | Comments(0)  

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