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「禅的生活」について

 2003年に刊行のちくま新書『禅的生活』(玄侑宗久著)を読んだ。その本が刊行される前に、著者の講演会で大体の話を聞いた覚えがあるが、かかる大震災の後にあらためて読んでみると、「禅的生活」というのは非常に有意義なもののように感ずる。

 人間の煩悩は脳機能により生じ、脳機能が停止したときに悟りを得る。「お悟り状態は、生活の役に立た」ず、「お悟り状態でその辺にいられたら、じつは邪魔になるだけ」というのは至極明快である。

 禅問答における禅語は含蓄がある。中年以降は、俗事にまみれつつ、他方では開き直って禅的な要素を意識し、取り入れて、曖昧さと厳格さの間を往き来するというのも面白い。

 結局、実社会では無益な、悟りという限界迄近づいてみた上で引き返し、程々(ほどほど)の志を以(もっ)て程々の人生を送るというのが我々凡人の理想的な生き方であると思う。

古川 宏 FURUKAWA Hiroshi

by ayanokouji3 | 2011-05-19 21:24 | Comments(0)  

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