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日本の植民地経営について-1

戦後60年、今更日本の植民地経営の「収支決算」を論ずる気にはなれない。植民地で生活したことのない、戦後生まれの人間として、過去の体制を云為することは難しい話ではあるが、父祖が個人として有した感想をもとに、日本の植民地経営について平成における視点で論ずることは出来るので、些か記してみたい。

  1. 小生の祖父は、日露戦争前後、現地で

    • 台湾を風土病研究の対象の地としてみていた。

    • 大連は満洲殖民の策源地としてみていた。

    • 韓国は属邦として当然と考えていた。

  2. 小生の父の世代は、

    • 植民地では収入も多くなっていたことを、当然のことと考えていた。当時若く人生で最もよい時代だったとしていた。

  3. 小生は、

    • 東南アジアを幾度となく広く廻ってみて、日本の植民地経営がもたらした功罪を冷静にとらえることが出来た。

ところで、松下芳男(1892~1983)著「日本軍閥の興亡」は概要次のように述べる。
日清戦争以後版図に入った領土において、民政を布いた場合においても殆ど現役軍人が施政長官となった。治安維持のために長官に軍事指揮権を必要としたこともあったし、植民地稼ぎの腐敗文官官僚に対し、頑固にまで見える正義感の強い武官長官を適当としたこともあった。これと反対に行政を知らぬ軍人の治績不振により、住民に不信と不満を抱かせたこともあった。

  • 朝鮮
    憲兵を多用した異邦統治の困難が痛感され、併合が日本のために利であったか、損であったか、よくよく考えなければならない。

  • 台湾
    文官総督により統治上好結果を収めたことは間違いないが、民族解放運動を根絶することは出来なかった。

  • 満洲
    心ある軍人が事変を企図した背景には、日露戦争で父兄の血を以て得た諸権利を排日、侮日で侵害されたことや、陸軍の庇護により馬賊の頭目から大元帥となった張の忘恩的態度を憤慨する軍人の正義感があった。日本の政治の貧困による対満政策の無能には驚いていた。

植民地経営の目的としては、日本の人口問題、経済の要求といった唯物的なものよりも、正義感が国家主義につながった唯心的なものが重要である、と松下氏は説いている。

古川 宏 FURUKAWA Hiroshi

by ayanokouji3 | 2005-03-29 21:49 | Comments(0)  

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