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鳩山民主党政権を斬る-1

自民党の体たらくが原因とは言え、「衆愚」による民主党政権誕生はまことに以て嘆かわしい限りである。自民党にも「派閥」と呼ばれる「党内党」が存在していたが、民主党はそれに輪を掛けて、右は自民党からの分裂組(右派保守)から、左は旧社会党系(左派革新)まで幅が余りにも広過ぎる。今迄(まで)は「政権交代」の四文字の名の下(もと)に結束してきたが、いざ、政権与党となった今、次に予測されるのは民主党内に於ける左右両派の鬩(せめ)ぎ合いだろう。それが、良い方向へ進むのであれば良いが、党内、ひいては政権の主導権争い ── 権力闘争 ── に費やされ、国政が二の次にされる様であれば、目も当てられない事と成る。

それは扨(さて)置き、鳩山民主党政権がマニフェストで打ち出した政策の一つに「高速道路の無料化」なるものがある。高速道路がタダで利用出来る。それはそれで非常に魅力的である。斯(か)く言う私もマイカーを所有しており、高速無料化は諸手(もろて)を挙げて喜びたい・・・だが、それは飽(あ)く迄も「個人的」な心境であり、大局的な見地で言えば、私は反対である。

今般、秋の大型連休、所謂(いわゆる)「シルバーウィーク」期間中、各地の高速道路ではゴールデンウィーク並、又はそれ以上の渋滞が起きた。それ以前に、土日祝祭日に実施されている「原則、何キロ走っても1000円」により、週末毎に規模の大小は別にしても渋滞が慢性的に発生している。言う迄も無い事だが、「高速道路」と言うのは、少なく共、「一般道路よりも速い速度で走る事の出来る道路」である筈(はず)だ。然(しか)し、現実には信号待ちが無いだけで、一般道路とさほど変わらぬ速度での走行を強(し)いられている。「1000円」キャンペーンでさえ、こうなのだから、無料化したら果たして一体全体如何(どう)なるのだろうか? 「中速道路」どころか「低速道路」に成り下がる可能性すらある。これでは、何の為の「高速道路」なのか最早(もはや)分からなくなってしまう。

人々が皆、高速道路に殺到する事で既に影響が出ているのが、鉄道、高速バス、そして、フェリー利用客の大幅な減少である。この儘(まま)、何の手当もせずに無料化すれば、先(ま)ず確実にフェリー業界は立ちゆかなくなる。それはそうだろう。通行料金がタダで陸上を走るのと、有料で陸上ほどの速度が出せないフェリー(船)とでは、勝負にならない。小泉・竹中が推進した「改革」に照らせば、市場競争原理による淘汰なのだから、やむを得ないと言った所なのだろうが、果たして本当にそれで良いのか?

A地点からB地点へ行くのに、バス路線しか無いのと、バス+鉄道があるのと、更に、バス+鉄道+空路があるのとでは、移動手段が多ければ多い程、利便性が向上する。又、事故や災害でバスの運行が出来なくても、鉄道があれば交通手段は確保される。当たり前と言えば、当たり前の話だが、高速道路の無料化でフェリーが廃止されれば、それはとどの詰まり、交通手段の選択肢を確実に一つ失うと言う事でもある。そして、一旦廃止されたものを復活させるのに、廃止した以上の時間と労力が必要になる事は自明の理である。

又、連合国(国連)気候変動サミットの場で鳩山総理は、「温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減する」等という国際公約を表明し、独り悦に入っているが、これに逆行する政策が「高速道路の無料化」であると言う事を、鳩山総理は認識しているのだろうか?

今迄、高速道路はおろか車の運転をろくにしていなかった人々が、急に車を利用しだした。これが悪いと迄は言わないが、マイカー利用を自粛して、なるべく電車やバスと言った公共交通機関を利用しようと言ったキャンペーンが従来からなされてきた。斯く言う私も、上京する際、以前はマイカーに乗り高速道路を利用していたのを、今では高速バスか電車利用である。それが、「1000円」キャンペーンで交通量が増加。更に高速道路の無料化が実現すれば、更に増加する事は火を見るよりも明らかである。

マイカー減税効果等で、ハイブリッド車やアイドリングストップ車の販売が好調ではあるものの、所詮はガソリンを燃やして排気ガス ── 詰まりは温室効果ガス ── を排出する事に変わりは無い。道路に於ける自動車の交通量が増加する事は、イコール温室効果ガスの排出量が増加すると言う事でもある。その様な現実を目の前にして、「温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減する」事が可能なのか? 答えはノーである。(註:但し、私は所謂「温室効果ガス」が地球温暖化の主要因とは考えてはいない。それ故、温室効果ガスの排出量削減で温暖化が抑制出来る等とは露共思ってはいない)

鳩山総理は産業界に対してより一層の削減をお願いしたい等と言っているが、産業界の温室効果ガス排出削減はかなり進んでおり、これ以上の大規模削減は無理な程、限界に達している。言わば、きつく絞った濡れ雑巾(ぞうきん)を更に絞るが如き行為でしか無い。となると、残るは一般家庭の排出量削減と言う事になるのだが、自動車の排気ガス問題一つ取っても、民主党は逆行する様な政策を推進しようとしているのだから、どう考えても公約達成は不可能だ。敢えて、公約達成を図ろうとするのであれば、高速道路無料化を撤回し、公共交通機関の利用を国民に対して強く促すしか無いのだが、それではマニフェストに反する事になる。さりとて、マニフェスト通りに無料化すれば、したで、今度は国際公約の履行が出来なくなる。

右を向いても、左を向いても、前に進むも、後ろへ退(ひ)くも、二進(にっち)も三進(さっち)もいかない。それが、未(いま)だ「政権交代」に酔いしれている鳩山民主党政権の現実なのである。

竹下義朗 TAKESHITA Yoshiro

by ayanokouji3 | 2009-09-27 22:23 | Comments(0)  

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